重機分野の脱炭素化(Ⅲ)

重機

 2020年代に入ると急速に重機の電動化が進み、蓄電池駆動による10トン以下の小型重機(ショベル、ダンプトラック、トラクターなど)の市場投入が相次いでいる。いずれも高コストであるが、リチウムイオン電池の高性能化によりディーゼル・エンジン駆動と同等の性能を有している。

蓄電池駆動

 日立建機は電動化の開発・製造に早い時期から取り組み、2000年代に蓄電池駆動式ショベルを市場導入し、中小型の有線式電動ショベルは、日本市場で累積100台以上の納入実績を有している。

 2020年には、欧州市場に8トン級の電動ショベル「ZE85」を投入した。また、2022年6月、欧州市場に5トン級の後方超小旋回型の電動ミニショベル「ZX55U-6EB」を投入した。有線でリチウムイオン電池に充電する方式で、子会社の日立建機ティエラが開発した機種で、組み立てて欧州へ輸出する。
 ディーゼル・エンジン型の約4倍と高コストであるが、欧州では補助金などの支援制度が整い、メンテナンスが容易で稼働コストを約4割減らすことが可能としている。

 2022年10月、日立建機はドイツ・ミュンヘンで開かれた国際建設機械見本市「bauma2022」に、13トン級と2トン級の電動ショベル試作機を出展した。いずれもリチウムイオン電池を搭載し、状況に応じて200ボルトの商用電源も利用できる。
 充電時間は13トン級で約1.5時間、2トン級で1時間(8割充電の場合)、蓄電池の稼働時間は4.4時間と2時間で、高出力電動機により、ディーゼル・エンジンと同等のパワーを確保している。

 一方、2021年6月、日立建機はスイスの重電大手ABBと共同で鉱山向けフル電動ダンプトラックの開発を実施すると発表した。電力を架線から取り込んで蓄電池に充電するタイプである。

図5 日立建機の5トン級の電動ミニショベル「ZX55U-6EB」

 2021年7月、コマツは中小型級の有線式電動油圧ショベル「PC78USE-11」を国内販売すると発表した。産廃処理工場など24時間稼働が必要な作業現場のニーズに応えて有線式が採用され、電動機駆動により、排ガスゼロ、騒音・排熱・振動の大幅低減を図った。

 2022年3月、コマツは本田技研工業と共同開発した電動マイクロショベル「PC01E-1」の国内レンタルを開始した。管工事・造園・農畜産などで利用される340kg級マイクロショベル「PC01」に、着脱式可搬バッテリー(Honda Mobile Power Pack e)と電動パワーユニット(eGX)を搭載している。

 2022年10月、コマツは主力の20トン級の中型電動ショベル「PC 210e」を欧州で販売すると発表している。米国プロテラのリチウムイオン蓄電池を搭載し、フル充電で最大8時間の稼働が可能である。都市部の道路整備や宅地造成など、夜間騒音の抑制が求められる場所での需要を狙う。
 2023年6月までに、20トン級の電動ショベルのレンタルを日本・欧州で始める。ディーゼル・エンジン方式と同等の掘削能力と耐久性を備えるが、オイル交換などエンジン関連の保守が不要となる。

図6 コマツの20トン級の中型電動油圧ショベル「PC-210e」

 2022年9月、クボタは2023年4月より欧州自治体向けにコンパクト電動トラクター「LXe-261」(最大出力:19.1kW)の有償長期レンタルを台数限定で開始すると発表した。1時間の急速充電で平均3~4時間の連続稼働が可能な大容量リチウムイオン電池を搭載する。
 午前中の作業で消費した蓄電池を昼休みに急速充電し、午後の作業を行う使い方に対応している。

 また、クボタは2024年に最大出力:20kW以下の電動トラクターを国内で販売すると公表している。その後、2030年にかけて中小型機種で電動農機のラインアップを増やしていく計画である。

図7 クボタのコンパクト電動トラクタ「LXe-261」

 2021年9月、米国キャタピラーは豪英系資源大手のBHPと、ゼロエミッションの蓄電池駆動の鉱山用大型トラックを開発する契約を締結した。

 2022年6月、ヤンマーホールディングスは、2025年までにトラクターやショベルカーなどの出力:15kW程度までの小型電動農機を販売すると発表した。中型以上のトラクターなどは、水素などを動力源にすることを検討する。また、井関農機は2022年内に12kW程度の小型芝刈り機を欧州で販売する。

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