鉄道分野の脱炭素化(Ⅲ)

鉄道

 シリーズ・ハイブリッドは電気式気動車(EDT)に蓄電池を搭載したもので、減速時に走行用の主電動機が発電機として機能し、回生電力を貯めることができる。蓄電池に貯めた電力は、次に加速する際の電力供給源となる。これがハイブリッド電動車(HET)の特長で、省エネ特性に優れている。

ハイブリッド電動車(HET)

 ハイブリッド電動車(HET:Hybrid Electric Train)は、ディーゼルエンジンで発電機を回転して得られた電力を蓄電池に貯め、主電動機のみで駆動するシリーズ方式と、ディーゼルエンジンと主電動機の両方を直接駆動に用いるパラレル方式に大別される。

シリーズ・ハイブリッド電動車

 シリーズ方式は電気式気動車(EDT)に蓄電池を搭載したもので、減速時に走行用の主電動機が発電機として機能し、発生した回生電力を貯めることができる。蓄電池に貯めた電力は、次に加速する際の電力供給源となる。これがハイブリッド電動車(HET)の特長で、省エネ特性に優れている。

 2007年7月、JR東日本はハイブリッドシステムを搭載した車両「キハE200形」が、長野県の小海線(小淵沢~小諸間)で世界で初めて営業運転を開始したことを発表した。
 ディーゼルエンジンと屋根上に設置されたリチウムイオン蓄電池を組み合わせ、車軸の駆動にかご形三相誘導電動機を使用するシリーズ・ハイブリッド方式が採用され、最高速度:100km/hである。

図5 シリーズ・ハイブリッド電動車『キハE200形』

 すなわち、運行時には、蓄電池からの電力または蓄電池とエンジン発電機の両方の電力を使用し、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置を介して電動機を駆動させる。
 制動時には、回生ブレーキにより電動機から発生した電力を、VVVFインバータ装置を介して蓄電池に充電する。エンジン発電機の起動・停止は、蓄電池の充電状態に応じて自動的に行われている。

 その他、シリーズ方式のハイブリッド電動車として、次の車両が知られている。

  • JR貨物で2011年7月から運用が開始された「HD300形」
  • JR東日本では2010年10月に長野地区「リゾートビューふるさと」で運用を開始した「HB-E300系」、2015年5月に仙石東北ラインで運用を開始した「HB-E210系」
  • JR西日本では2017年6月に「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」で運用を開始した「87系」、2017年6月に「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」で運用を開始した「87系」
  • JR九州では2020年3月から佐世保線、大村線、長崎本線に導入された「YC1系」
  • JR東海では2022年7月に「特急ひだ」で運用を開始した「HC85系」など

 ところで、日本における旅客用車両では、電気式気動車に先行してハイブリッド電動車が開発された経緯がある。そのため、「HB-E210系」や「B-E300系」など一部の車両では、蓄電池の電力を使用しない電気式気動車モードで走行が可能なハイブリッド式電動車もある。

パラレル・ハイブリッド電動車

 パラレル方式は、JR北海道と日立ニコトランスミッションがモータアシスト(MA)式ハイブリッド駆動システムを開発した。このMA式はディーゼル動車に電動機と蓄電池を追加した構成で、エンジン出力は変速機を介して駆動軸で車輪に伝達されるほか、電動機の出力も変速機経由で車輪に伝達できる。

 実際の運行では、約20~45km/hまでは電動機のみで加速し、その後、エンジンと電動機の両方で加速する。電動機1台でエンジンによる発電、回生ブレーキによる充電、蓄電池による駆動を行うため、エンジンで発電した電力で電動機を駆動する場合、同時に余力で蓄電池を充電することはできない。

 さらに簡易システムとして、JR西日本が開発したマイルド・ハイブリッド式がある。ディーゼル動車にハイブリッドシステムを搭載したもので、回生ブレーキによるエネルギー回収を主目的としているため、運行時に電動機のみで加速することはできないシステムである。

 しかし、MA式とマイルド・ハイブリッド式は、2021年現在において、いずれも実用化には至っていない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました