使用済核燃料の「再処理工場」の操業が大幅に遅れている。1992年に建設を開始したがトラブル頻発により、2021年6月には総事業費が14.44兆円に膨らんだことを公表し、2022年9月には26回目となる工事完成の延期を発表。日本原燃は「2024年度のできるだけ早い時期の操業」を公表したが、見通しは?
使用済核燃料の再処理工場の建設遅れ
プルサーマル計画を進めるためには、青森県六ヶ所村で日本原燃が建設を進める「核燃料再処理施設」を稼働させる必要がある。六ヶ所村には、1992年から操業している「ウラン濃縮工場」と「低レベル放射性廃棄物埋設センター」、1995年から操業している「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」がある。
しかし、施設の中核である核燃料の「再処理工場」の操業が大幅に遅れている。1992年に建設を開始したがトラブル頻発により、2021年6月には総事業費が14.44兆円に膨らんだことを公表し、2022年9月には26回目となる工事完成の延期を発表。日本原燃は「2024年度のできるだけ早い時期の操業」を公表した。
再処理工場が完成すれば、フル稼働時に約800トン/年の使用済核燃料を処理できる。使用済核燃料は各原発などで管理保管され、2023年の総量は約1.9万トンに達する。全施設の管理容量は合計約2.4万トンのため約80%に達しており、再処理工場の早期の稼働が待たれる。
また、使用済核燃料から抽出されたウランとプルトニウムから混合酸化物(MOX)燃料を製造する「MOX燃料工場」も、2020年12月に原子力規制委員会から安全対策が新規制基準に適合したことを認められたが、2021年6月には総事業費が2.43兆円に膨らんだことを公表し、2024年度上期に竣工を延期してい。
再処理工場の立地自治体である青森県では、核燃料サイクルが滞った結果、なし崩し的に高レベル放射性廃棄物の最終処分地になる事態を懸念している。
使用済核燃料の再処理工程
再処理工場での工程:
①原発から運ばれてきた使用済核燃料は、使用済燃料輸送容器(キャスク)から取り出され、燃料貯蔵プールで冷却・貯蔵して放射能を数百分の1に減衰。(原発のプールでの冷却・貯蔵と合わせて4年以上)
②長さ約3mの燃料棒を被覆管ごと数cm程度に細断し、高温の硝酸で溶かしてウラン・プルトニウム・核分裂生成物などが混ざる硝酸溶液にする。溶け残った被覆管などの金属片は、固体廃棄物として処理。
③硝酸溶液と油性の溶媒を混合して第一段階で核分裂生成物を分離する。分離した核分裂生成物は濃縮され高温のガラス原料と混ぜ、ステンレスの容器(キャニスター)に入れて固化。
④さらに、化学的性質の違いを利用して第二段階でウラン溶液とプルトニウム溶液を分離。
⑤精製工程で、ウラン溶液とプルトニウム溶液中の微量な核分裂生成物を除去した後、脱硝工程でウラン溶液から硝酸を蒸発・熱分解させて、酸化ウラン粉末として貯蔵。
⑥プルトニウム溶液は、一度分離したウラン溶液と1:1の割合で混合され、硝酸を蒸発・熱分解させて、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)粉末の状態で貯蔵。
高レベル放射性廃棄物のガラス固化
再処理工程で出る高レベル放射性廃棄物は液体のため蒸発濃縮して容量を減らした後、ガラス原料とともに高温で溶かし混ぜ合わせ、ステンレス容器(キャニスター)に入れて冷却しガラス固化体とする。 ガラスは水に溶けにくくて化学的に安定なため、放射性物質を長期間変化なく閉じ込めるために使われる。
ガラス固化体は、強い放射線を発し、製造直後の表面温度は200℃を超える。そのため青森県六ヶ所村の「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理施設」で30〜50年間にわたり冷却しながら貯蔵した後、最終処分地に向けて搬出し、300m以上の深い地層中に処分(地層処分と呼ぶ)され、以後、10万年にわたり保管される。
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