一口で原発といっても世界では多くの型式の原発が開発されている。日本で商用化されているのは原子炉容器内で原子炉冷却材である軽水が沸騰状態で使用される沸騰水型軽水炉(BWR)と、沸騰しないように加圧して使用される加圧水型軽水炉(PWR)の2種類である。
ところで原発とは?
原子炉の型式分類
広い意味の原子炉は、ウランやプルトニウムの核分裂反応を利用した原子炉(核分裂炉)と、水素やヘリウムの核融合反応を利用した核融合炉に大別できる。核分裂反応とは「原爆」、核融合反応とは「水爆」の基本原理である。
この原子炉(核分裂炉)は、核分裂反応によって生じる高速中性子を減速して核分裂反応を生じさせる熱中性子炉と、減速しないで核分裂反応を生じさせる高速中性子炉に大別できる。現在の主流である熱中性子炉は、使用される中性子減速材により軽水炉、重水炉、黒鉛炉に分類される。
この中性子減速材に使われる軽水は普通の純水であり、水分子の水素が重水素(原子核に中性子が1つ加わり重くなった水素)に置換されたものを重水と呼び区別している。また、それぞれの炉は使用される原子炉冷却材によって小分類される。
現在の主流である軽水炉には沸騰水型と加圧水型の2つの炉型があり、原子炉容器内で原子炉冷却材である軽水が沸騰状態で使用されるものは沸騰水型炉(BWR)、沸騰しないように加圧して使用されるのが加圧水型炉(PWR)である。
重水炉では初期に沸騰水型、ガス冷却重水型も検討されたが、現在はカナダで設計された天然ウランを燃料とする加圧重水型炉(CANDU or PHWR)が商用化されている。黒鉛炉では原子炉冷却材として軽水を沸騰状態で使用する沸騰水型炉(RBMK or LWGR)がロシアで開発され、旧ソ連の国々で使われている。
英国、フランスで発電用に設計されたのは、炭酸ガスを使用するガス冷却炉(GCR)である。
一方、次世代原子炉として注目されているのが、高温ガス炉と高速増殖炉である。高温ガス炉は多様な熱利用を可能とする炉型で黒鉛炉の一種であり、原子炉冷却材であるヘリウムガスを高温(700~950℃)で用いる高温ガス炉(HTGR)、さらに950℃で用いる超高温ガス炉(VHTGR)の実証試験が進められている。
高速増殖炉(FBR)は核燃料サイクルを実現するための中核となる炉型であり、高速中性子炉に分類され、原子炉冷却材として液体金属ナトリウムが使用され、発電しながら消費した以上の燃料(プルトニウム)を生成することができる。
近年、プルトニウム過剰で増殖に意義を見出せなくなり、FBRを単に高速炉(FR or FNR)と呼ぶことが多くなり、プルトニウム焼却用原子炉として考えられている。
発電用原子炉として代表的な炉型は水で中性子を減速・冷却する軽水炉(LWR)であり、世界で368基が運転可能であり全発電用原子炉437基の84%を占めている。その内訳は沸騰水型炉(BWR)が61基(16.6%)、加圧水炉(PWR)が307基(83.4%)である。
その他、加圧重水型炉(CANDU or PHWR)が47基で全発電用原子炉の10.8%を占め、沸騰水型黒鉛炉(RBMK or LWGR)が11基で2.5%、ガス冷却炉(GCR)が8基で1.8%を占めている。
沸騰水型軽水炉(BWR)
米国General Electric(GE)が開発した発電用原子炉で、国内では東芝エネルギーシステムズと、日立製作所とGEの原子力事業統合会社の日立GEニュークリア・エナジーが供給している。
沸騰水型炉では、原子炉圧力容器内で核分裂反応により生じた熱で蒸気を発生させ、この蒸気を直接に蒸気タービンに導いて回転させて発電する仕組みである。原子炉圧力容器内の軽水温度は285℃、圧力は70気圧(飽和蒸気圧)である。
蒸気タービンを回した蒸気は復水器で軽水に戻され、給水ポンプで再び原子炉圧力容器に送られるが、一部は再循環ポンプで昇圧されて、ジェットポンプにより容器底部から炉心に送られる。容器上部には気水分離器と蒸気乾燥器があり、容器外の下部から核分裂反応を制御するための制御棒が挿入される。
2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、この沸騰水型炉(BWR)で起きた。福島第一原発の原子炉は6基あり、東日本大震災による津波では1~4号機が電源を喪失し、冷却機能を失った結果、1,3,4号機で水素爆発が発生し、1,2,3号機が炉心溶融に至った。
加圧水型軽水炉(PWR)
米国Westinghouse Electric(WH)が開発した発電用原子炉で、欧州ではWHから技術導入したフランスのフラマトムが、日本では三菱重工業が供給している。
加圧水型軽水炉では、原子炉圧力容器内で核分裂反応により生じた熱で一次冷却水(軽水)が加熱されて高温高圧水となり、蒸気発生器に導かれて二次冷却水(軽水)を蒸気に変え、蒸気タービンを回転させ発電する。原子炉圧力容器内の軽水温度は320℃で、沸騰しないよう157気圧に加圧されている。
加圧水型炉では放射性物質を含む一次系冷却水が原子炉格納容器外に出ないため、二次系に関する保守点検が容易となる特長がある。
1979年3月に米国ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所2号機事故は、加圧水型炉で起きた。営業運転開始から3カ月後、原子炉1次系の部分的な装置故障を発端に、運転員の誤操作と計器の誤作動が重なり炉心溶融に至った。
2019年月にスリーマイル島原子力発電所1号機の操業終了とともに発電所は閉鎖された。2号機は事故から11年後、全体の99%、130トン余りの燃料デブリを取り出し閉鎖された。2053年までに廃炉・解体を終了するとしているが、放射性物質の完全除去は困難と考えられる。
重水炉、黒鉛炉、ガス冷却炉
重水炉(HWR)は加圧水型が主流である。重水は軽水に次ぐ優れた中性子減速材で、中性子をほとんど吸収しないため天然ウラン燃料のみでも炉設計が可能なため多くの国で開発が進められた。その結果、カナダの独自設計であるCANDU炉(PHWR)が商用化された。重水は常圧で100℃以下に保たれている。
CANDU炉心は練炭形状で、原子炉圧力容器内に重水が装填され、練炭の穴には燃料集合体が装填されている。また、横置圧力管型構造と短尺燃料の利点を生かして、運転中の燃料交換を可能としている。
黒鉛炉は旧ソ連諸国で使用されている沸騰水冷却圧力管型炉(RBMK or LWGR)、他にガス冷却炉(GCR)、その改良型(AGR)が実用化されている。
RBMK(LWGR)は約1700本の圧力管が黒鉛ブロックを貫通し、その圧力管の中に燃料棒が挿入され、燃料棒の周りを原子炉冷却材である軽水が通過して蒸気化し、蒸気タービンに導いて発電する仕組みである。原子炉格納容器が無いことから重大事故が起きれば放射性物質が大量に拡散する恐れがある。
ガス冷却炉は英国やフランスなどで設計が行われた。天然ウランや金属燃料を使用した炭酸ガス冷却型の黒鉛減速炉で、燃料棒をマグノックス(マグネシウム合金)被覆したためマグノックス炉とも呼ばれる。英国では燃料を低濃縮ウランに変え、炉の出力密度と熱効率向上を図った改良型が開発された。
1986年4月にソビエト連邦(現在のウクライナ)で発生したチョルノービリ原子力発電所事故は、黒鉛炉(RBMK)で起きた。4号機の非常用電源を実験中、出力が急上昇して炉心爆発を起こし、原子炉と建屋が崩壊して大量の放射性物質を放出した。
現在も発電所の30km圏内は立ち入り禁止区域である。事故直後にコンクリート製の石棺で囲われたが、老朽化のため2017年に鋼構造シェルターで密閉し、2023年までに石棺を解体する予定であるが、内部に残る190トンの核燃料デブリの取り出しなど、具体的な計画は見えていない。
コメント